中小企業向けの賃上げ税制とは?

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中小企業向けの賃上げ税制とは?

皆さんこんにちは 長崎県佐世保市にある経営コンサルティング会社 翔彩サポートです。

今回は「賃上げ税制」について解説します。

賃上げ促進税制は、賃上げや人材育成への投資に積極的な企業が税額控除を受けられる制度です。

中小企業向け賃上げ促進税制で要件を満たす中小企業は、最大40%の税額控除を受けられ、税負担を軽減しつつ賃上げが可能です。

中小企業向け賃上げ促進税制とは?

賃上げ促進税制は、従業員の賃上げや人材育成への投資に積極的な企業が、所定の税額控除を受けられる制度です。所得拡大促進税制から改正され、要件の簡素化や控除率の引き上げで内容が拡充しました。

大企業向け・中小企業向けで内容が分かれており、中小企業向けの制度では給与などの増加額の一部を法人税・所得税から税額控除できます。

対象者

中小企業向け賃上げ促進税制の対象者は、以下の通りです。

● 資本金または出資金、従業員数が一定以下の法人
● 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
● 中小企業等協同組合や出資組合の商工組合などの組合組織

適用要件

適用要件には、通常要件と2つの上乗せ要件が存在します。

● 通常要件:給与などの支給額が前年度比で1.5%以上増加
● 上乗せ要件1:給与などの支給額が前年度比で2.5%以上増加
● 上乗せ要件2:教育訓練費が前年度比で10%以上増加

2つの上乗せ要件は併用でき、併用すれば最大40%の税額控除率です。

所得拡大促進税制からの3つの変更点

現在の賃上げ促進税制は、2022年4月に改正された制度です。以前は2021年4月~2022年3月までに開始する事業年度を対象にした制度があり、所得拡大促進税制と呼ばれていました。

旧制度にあたる所得拡大促進税制からの変更点は、以下の通りです。

● 上乗せ要件を簡素化し、税額控除率を引き上げ
● 経営力向上要件を廃止
● 教育訓練費の明細書を保存義務へ変更

上乗せ要件を簡素化し、税額控除率を引き上げ

旧制度の所得拡大促進税制では、上乗せ要件で加算される税額控除率は10%、最大25%の税額控除率でした。賃上げ促進税制では、最大40%の税額控除率になっています。

また上乗せ要件の内容も簡素化し、適用しやすくなりました。旧制度の上乗せ要件では、給与等支給額2.5%以上増加と、教育訓練費の増加または経営力向上の証明が必要でした。

賃上げ促進税制では、給与等支給額が2.5%以上増加するだけで控除率が15%上乗せされます。教育訓練費の10%以上増加で控除率が10%加算される上乗せ要件も加わり、併用も可能です。

経営力向上要件を廃止

旧制度では控除率の上乗せに、給与等支給額2.5%以上の増加に加え、教育訓練費の増加または経営力向上の証明が必要でした。

経営力向上の証明には、適用年度終了までに経営力向上計画の認定が必要なうえ、経営力向上が確実にできたと証明しなければなりませんでした。

賃上げ促進税制では、経営力向上要件は廃止されています。控除率の上乗せ要件からなくなり、適用を受けるために経営力向上の証明は不要です。

教育訓練費の明細書を保存義務へ変更

教育訓練費の増加で上乗せ要件を適用する場合、旧制度では明細書の添付義務がありました。

賃上げ促進税制では、添付義務から保存義務に変更され、税務申告時に明細書を添付する必要はありません。

ただし実施時期・実施内容・受講者・支払証明を明記した明細書の作成・保存が必要です。

賃上げ促進税制を適用する際の注意点

● 一時的な海外勤務をしていても国内雇用者に含まれる
● 教育訓練費の増加には対象者・範囲が決まっている
● 適用年度と前事業年度の月数が異なる場合は調整する

一時的な海外勤務をしていても国内雇用者に含まれる

賃上げ促進税制の適用は、国内雇用者へ支払った給与や教育訓練費の増加が要件です。国内雇用者とは、国内にある事業所で作成された賃金台帳に記載された人を指します。

国内の事業所で作成された賃金台帳に名前があり、給与を支給していたなら、海外出張していた従業員も対象者です。

教育訓練費の増加には対象者・範囲が決まっている

教育訓練費の増加で適用できる上乗せ要件では、教育訓練費の対象者と範囲が決まっています。教育訓練を目的に使った費用でも、対象外であれば教育訓練費に含みません。

教育訓練の対象者は、法人または個人の国内雇用者です。

適用年度と前事業年度の月数が異なる場合は調整する

決算期の変更や前事業年度が設立初年度だと、適用年度と前事業年度の月数が異なる場合もあるでしょう。

適用年度と前事業年度の月数が異なる場合、同じ期間で比較できないため制度の適用や税額控除の算定時に調整が必要です。月数に応じた調整をするため、比較雇用者給与等支給額を調整して計算します。

まとめ

従業員の賃上げや教育機会拡大は人材定着や企業の生産性向上にも繋がります。賃上げ促進税制を活用し、自社の成長機会に活かしましょう。

上記の内容以外にもご不明な点等ございましたら、翔彩サポートまでお気軽にご相談ください。

監修者情報

経営コンサルタント         翔彩サポート 代表 広瀬祐樹

【経営分析×経営アドバイス×財務管理】による永続的に繁栄する経営体制を支援。

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