医療法人が節税でよく使うMS法人とは何か?MS法人のメリット・デメリットについて
皆さんこんにちは 長崎県佐世保市にある経営コンサルティング会社 翔彩サポートです。
『MS法人を設立する理由は何ですか?』
『MS法人を設立するメリットとデメリットは何ですか?』
『MS法人を設立するときの注意点が知りたい』
医療法人を経営されている方の中で、MS法人を持たれている方がいらっしゃいますが、MS法人を持たれていない方からすれば、MS法人を持つ意味が何なのか分からないこともあるでしょう。
そこでこの記事では、MS法人の概要やMS法人の特徴について、起業から経営をサポートする長崎県佐世保市の翔彩サポート、代表の広瀬が解説します。
MS法人について詳しく知りたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。弊社は、初回の無料カウンセリングを実施していますので、お気軽にご相談ください。
MS法人とは?

MS法人はメディカル・サービス法人の略で、法令上の医療機関でなくてもできて、かつ病院運営にかかわる事業を行う法人のことをいいます。MS法人自体は法律で定められたものではなく、一般的な法人(株式会社や合同会社)と同じものです。
法人として病院を開設したり施設を運営したりする場合は医療法人として法人登録をする必要があります。しかし医療法人だと医療法でさまざまな規制を受けたり、新たに設立する場合は財産権を持つことができなかったりと、色々な制約がかかってしまうのです。
MS法人で「保険請求業務」、「会計業務」、「医薬品・医療機器・医療器具器具などの仕入、管理、販売業務」、「人材派遣」といった事業を医療法人から請け負うことで、医療法人とMS法人で事業を分散することが可能です。あとから詳しく説明しますが、事業の分散には節税やリスク分散といったメリットがあります。
MS法人と医療法人との違い
MS法人はあくまでも医療法人からの仕事を請け負う一般法人であるため、MS法人と医療法人の違いについては一般法人と医療法人の違いと同じです。
医療法人の場合、普通の法人とは違って以下のような要件が求められます。
- 社員が3名以上いること
- 役員として理事3名(理事長含む)、監事1名がいること
- 1ヶ所以上の病院・診療所・介護老人施設があること
- 医療行為に必要な設備・器具があること
- 年間支出予算の2か月分の運転資金があること
- 個人時代の設備を買い取る場合は別途そのための資金があること
- 医院の土地・建物は医療法人所有のものか、もしくは長期の賃貸借契約が担保されていること
- 既存の法人と同様の法人名を使用していない
- 誇大広告にならないような法人名であること
- 2つ以上の医療施設を保有する場合、それぞれの医療施設の管理者が事実上の雇用関係にないこと
このように医療法人はMS法人(一般法人)とは違い、数多くの要件が求められてしまいます。
さらに医療法人の場合、営利性が認められていなかったり、現在は持ち分なしの法人設立しか認められていなかったりと、経営者として見た場合のデメリットが大きいです。
MS法人のメリット

MS法人のメリットは、主に以下の5つです。
- 所得の分散ができる
- 経営の分離ができる
- 医療法で規制されている事業にも手を出せる
- 株式や社債発行、融資による資金調達ができる
- 相続対策ができる
具体的な内容については、以下で詳しくご説明します。
所得分散ができる
MS法人を設立することで所得を分散させ、所得税を抑えることができます。
ただし、医療法人の役員がMS法人の役員を兼務することは不適切だとみなされるため、医療法人の理事長本人(代表医師本人)がMS法人の役員に就任することはできません。そのため基本的にMS法人の代表には親族を据えることが多いです。MS法人の代表は医療法人の理事と違って、医師である必要がありません。
また医療法人だけでなく、個人病院がMS法人を設立する場合も大きな節税メリットがあります。
個人事業主であれば本人がMS法人の役員になることができますし、もちろん親族を役員にして所得を分散させることも可能です。
経営の分離化
会計事務や備品管理といった医療法人でなくてもできる業務をMS法人に委託すれば、経営を分離することができます。
経営を分離すればお金の流れがわかりやすくなったり診療に専念しやすくなったりするため、業務効率の改善を図ることが可能です。
また万が一メインとなる医療法人で問題が発生した場合、経営母体を分けておくことで財産を失うリスクを分散することができます。とくに今から新しく医療法人を設立する場合は出資持ち分なしとなってしまい、出資者の財産権が認められません。
そういったリスクを低減するためにも、MS法人は設立されます。
医療法人ではできない事業への参入
MS法人であれば、医療法で規制されている事業へ参入することもできます。
医療法人の場合、化粧品の販売や医療機器の貸付といった営利活動を行うことができません。MS法人は、一般的な法人と同じ扱いであるため、さまざまな事業へ参入できます。
医療分野以外にもどんどん事業を拡大していきたい場合は、MS法人の設立を考えると良いでしょう。
資金調達の広さ
MS法人を設立することで、医療法人では難しい資金調達ができるようになります。
たとえば医療法人の場合、株式や社債を発行しての資金調達を行うことができません。もしくは不動産を担保にして融資を受けるということも不可能です。
そこでMS法人を設立すれば、そちらで調達した資金を医療法人に貸し付けるといった手段がとれるようになります。
相続対策
MS法人の設立は、相続対策としてもメリットが大きいです。
医療法人の場合、後継者は医師である必要があります。そのため親族に医師がおらず、後継者がいないという悩みを抱えている方も多いです。
その点、MS法人であれば医師でない親族にも承継させることができます。事業の一部だけでも親族に継がせたいという場合は、MS法人を設立すると良いでしょう。
MS法人のデメリット

MS法人のデメリットは、主に以下の4つです。
- 税務否認リスクがある
- 役員の兼務ができない
- 薬機法の知識は必要になる
- 運営コストが増加する
具体的な内容については、以下で詳しくご説明します。
税務否認リスク
MS法人を設立するうえでもっとも大きなデメリットが、税務否認リスクです。
税務調査において医療法人とMS法人の取引が適正であると認められず、否認されてしまう場合があります。取引に合理性、妥当性がなく、租税回避のための収入分散だとみなされてしまうと、取引自体が認められないことがあるのです。
とくに第三者との取引と比べて法外に価格が高い場合などは悪質な租税回避とみなされ、多額の追徴課税を課せられる可能性もあります。節税対策としてMS法人を立ち上げたつもりが、結局多くの税金を支払わされる可能性があるわけですね。
役員の兼務ができない
すでに医療法人の役員になっている場合、本人がMS法人の役員を兼務することはできません。
医療法において、医療法人の役員がその医療法人の開設・経営上で利害関係にある営利法人などの役員を兼務することは原則禁止とされているからです。その背景には、医療法人の大原則である非営利性を担保する目的があります。
そのため、両法人の役員を兼務していて、かつ医療法人の非営利性に影響を与える取引をしているとみなされると、MS法人との取引自体が否認される可能性があります。それを避けるためにも、MS法人を設立するには代表となる人物を別途用意しなければいけません。
医薬品販売を行う場合に薬機法の知識は必要になる
MS法人の代表は医師または歯科医師でなくてもなれますが、基本的に薬機法の知識が必須となります。
たとえば化粧品や医薬部外品の製造販売、医療機器や医薬品の販売を行うには許可が必要です。もしくは広告を出稿するだけであっても、薬機法は深く関わってきます。
そのため医療法人と取引をするためのMS法人を立ち上げる場合は、薬機法についてしっかり理解したうえで実施しなければいけません。理解がないままMS法人を設立してしまうと予期せぬトラブルのもととなってしまうので注意してください。
運営コストが増加
新たにMS法人を設立するわけですから、当然、設立、維持にはコストがかかってきます。
たとえば設立時の登記費用や設立手数料、運営時の人件費や社会保険費などです。事務手続きが煩雑化することで人件費がかさむケースもあります。
MS法人運営上の注意点
MS法人運営の際には、「病医院とMS法人との取引が適正であるかどうか」に注意してください。
特に、取引金額の算定根拠を明確にする、契約書を作成する、という2点を心掛けるようにしましょう。
医療法の観点でいうと、医療法人がMS法人を介して実質的に利益配当をしたことになれば医療法に違反することになり、節税に重きを置きすぎるあまりMS法人への資金が過大となって、医院経営を悪化させてしまっては本末転倒です。
また、MS法人と医療法人の役員の兼務は、行政側としては認めないことが原則ですが、「非営利性を損なわない」という範囲内では考慮されるべきといえます。
いずれにしても医療法人の所得を抑えつつ、残余財産が過剰にならないよう、MS法人の活用を行っていくことが望ましいでしょう。
まとめ:医療法人経営にお困りの方は、翔彩サポートまで
MS法人は医院経営において様々なメリットがあります。適切な税務対策や経営戦略を立てるためには、MS法人に精通した専門家が必要です。
個人事業主の方でも医療法人経営を院長一人で切り盛りされている方は、翔彩サポートまでお気軽にご相談ください。
監修者情報

経営コンサルタント 翔彩サポート 代表 広瀬祐樹
【経営分析×経営アドバイス×財務管理】による永続的に繁栄する経営体制を支援。
経営について悩んでいることがあれば、どんなことでも構いません。お気軽にご相談ください。