個人事業主の確定申告における青色申告と白色申告の違い
皆さんこんにちは 長崎県佐世保市にある経営コンサルティング会社 翔彩サポートです。
個人事業主やフリーランスの方は確定申告が必要です。
この確定申告にはいくつか種類があり、それぞれ収入の種類や申告方法の仕方によって、得られるメリットが異なります。
事前に情報を仕入れ、適切な手段で対応できるようにしておきましょう。
ここでは、そもそも確定申告とは何か、そして青色申告と白色申告のメリット・デメリットについて解説していきます。
確定申告とは?
確定申告とは、1年間の収入から経費等を差し引いて所得を算出し、そこから納める税金の額を計算して国(税務署)へ報告する手続きのことをいいます。
会社員やパート、アルバイトの方は、会社が年末調整で所得税の金額を確定しますが、個人事業主の方はご自身で確定申告をしなければいけません。
確定申告をしたことがないと「確定申告のやり方がまったくわからない」「そもそも自分が確定申告を行う必要があるかどうかわからない」など、戸惑うことが多いかもしれません。
なぜ、確定申告が必要なのかをみていきましょう。
確定申告の必要性
納税は国民の義務であり、労働などによって一定額以上の所得がある人は、その金額に応じた所得税を納めなければなりません。
源泉徴収や予定納税によって必要以上に税金を納付していた場合は、確定申告を行うことによって納めすぎた税金が還付されます。
確定申告をしていなければあなた自身が何をしている人なのか証明ができません。
例えば、住宅ローンを組みたいと思っても収入を証明できるものが何もなければ金融機関から融資してもらうことはできません。
確定申告をする必要性は、自分自身が何者なのか第三者へ証明するためのものでもあります。
青色申告と白色申告の違い
事業所得や不動産所得、山林所得がある場合、所得税の申告方法には青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告を行うと、最大65万円の控除を受けることができます。家族への給与(青色事業専従者給与)を必要経費として計上できたり、経費として一括で計上できる金額が増えたりすることも大きなメリットといえます。
青色申告を行う際は、確定申告書のほかに年間の収入や経費などをまとめた書類「青色申告決算書」を提出する必要があり、帳簿の作成に複式簿記の知識が必要であることから、負担に思う方も多いでしょう。
白色申告の場合は、青色申告のような複雑な帳簿付けはないため提出書類も非常にシンプルです。
その反面、青色申告特別控除などの特例を受けることはできません。
青色申告(65万円、55万円、10万円控除の場合)と白色申告の違いについて、詳しく説明します。
税制の違い
青色申告と白色申告の違いは、青色申告特別控除という65万円、55万円、10万円いずれかの控除を受けられるか否か、という点です。
青色申告は、青色申告の承認を受け、一定の要件を満たすことで、青色申告特別控除を受けることができます。事前申請は所轄の税務署で行います。
白色申告は、青色申告特別控除などの特例を受けることはできませんが、事前申請をしなくても利用できる申告制度です。
青色申告
青色申告者として承認を得ており、一定の要件を満たすことで65万円、55万円、10万円いずれかの青色申告特別控除を受けることができる
白色申告
青色申告者ではない人が利用する申告制度
事前申請の有無の違い
青色申告と白色申告は、事前申請の有無も違います。
青色申告を選択するためには、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。
新規開業(その年の1月16日以降に業務を開始)した事業主は、業務を開始した日から2か月以内に申請書を提出しなければなりません。
青色申告
確定申告の対象となる年の3月15日までに「青色申告承認申請書」の提出が必要
白色申告
事前申請の必要なし
提出書類、申告方法、帳簿の保存方法の違い
青色申告と白色申告では、提出書類、申告方法、帳簿の保存方法なども異なります。
青色申告を利用して、65万円の控除を受ける場合は、青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)を添付し、期限内に確定申告書の提出が必要です。
e-Tax(国税電子申告・納税システム)による申告または優良な電子帳簿保存の要件を満たす必要もあります。
電子帳簿保存の要件は、国税庁の「優良な電子帳簿の要件」から確認してみてください。
10万円の青色申告特別控除を受ける場合は、青色申告決算書の貸借対照表の提出は不要です。
65万円控除、55万円控除のその他の要件を満たしていても、期限後の申告だと自動的に10万円控除の適用になってしまいますので、ご注意ください。
白色申告を利用する場合は、決算書の代わりに収支内訳書を提出します。
青色申告
- 確定申告書
- 青色申告決算書(貸借対照表と損益計算書を含む)※10万円控除の場合、貸借対照表は不要
- 各種控除に関する証明書
- その他(届け出の内容に応じた補足書類など)※65万円控除の申告をする場合は、e-Taxでの申告または優良な電子帳簿の保存が必要
白色申告
- 確定申告書
- 収支内訳書
- 各種控除に関する証明書
- その他(届け出の内容に応じた補足書類など)
記帳方法の違い
青色申告と白色申告では、記帳方法も異なります。
青色申告(65万円、55万円控除)の場合、記帳方法には複式簿記を採用します。
複式簿記とは、1つの取引を複数の面から捉えて帳簿に記入する方法です。借方と貸方、それぞれの勘定科目を使って記帳を行います。
複数の面から取引を捉えることを基本としたものが複式簿記といわれています。
複式簿記では、賃借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成し、お金の流れを明らかにします。
一方で、青色申告でも10万円の控除を受ける場合と、白色申告の場合は、単式簿記の記帳で問題ありません。
青色申告
複式簿記(青色申告特別控除で10万円控除の場合は、単式簿記でも可)
白色申告
単式簿記
e-Taxの使用要否の違い
青色申告と白色申告では、e-Tax(国税電子申告・納税システム)使用の要否も違ってきます。
青色申告で65万円の控除を受ける場合には、e-Taxの利用が必須となります。
e-Taxを利用することで、確定申告書や貸借対照表、損益計算書などをスムースに作成・提出することができます。
青色申告で55万円、10万円の控除を受ける場合や、白色申告の場合は、e-Taxを使用する必要はありません。
青色申告(65万円控除)
e-Taxの利用が必要
青色申告(55万円、10万円控除)、白色申告
e-Taxでなくても可
青色申告のメリット
青色申告には、さまざまな優遇措置があります。
青色申告特別控除
青色申告をするうえで最大のメリットといってもよいのが、青色申告特別控除です。
青色申告控除とは、青色申告をするだけで最高で65万円の控除が受けられるというものです。
65万円控除の適用を受けるには、複式簿記などによる記帳など、さまざまな要件を満たす必要があります。
それ以外の場合は55万円の控除や10万円の控除があります。
赤字を3年間繰り越せる、もしくは前年1年間繰り戻せる
事業所得や不動産所得で赤字が発生した場合は、その赤字を翌年度以降3年間繰り越すことが可能です。
繰り越した赤字は翌年以降の黒字から差し引くことができます。
また、今年度が赤字で前年度が黒字だった場合は、今年度の純損失額赤字を前年度の黒字から繰り戻して控除し、前年度分の税金の還付を受けることもできます。
家事関連費の必要経費算入
家事関連費とは、プライベートでも家事でも使っている電気代やガス代、携帯代などのことです。
経費として算入する場合には、合理的な計算を行うようにしましょう。
税務調査において、過大に経費算入している場合は否認される可能性が高いです。
白色申告の場合も家事関連費の経費算入は認められていますが、主たる部分が業務での使用(おおむね、その経費を事業で使っていること)でないかぎり、経費にはできません。
青色事業専従者給与の必要経費算入
個人事業では、原則親族に対する給与は経費にできません。
青色申告で一定の要件を満たしている場合は、青色事業専従者給与として経費にすることができます(白色申告の場合は、事業専従者控除として一定額の控除があります)。
少額減価償却資産の特例
白色申告の場合、仕事で使うパソコンや車などの固定資産で10万円以上の物は、使用できる期間に応じた減価償却を行わなければならず、購入してから経費として計上しきるまでに長い時間を要します。
青色申告の場合、30万円未満のものであれば一括で全額経費にすることができるため、ここでも税金を抑えることができます。
貸倒引当金の計上ができる
「貸倒引当金」とは、代金の回収が不能になるかもしれないリスクに備えるために設定するものです。
簡単にいうと、未回収となるであろう債権の金額を計算し、その分を本年度の所得から減らすことができる制度です。無事に代金が回収された場合は、次年度の決算時に貸倒引当金の戻入処理を行い、所得に加えます。
白色申告でも貸倒引当金を設定できますが、貸し倒れることが確実と思われる場合に限ります。
棚卸資産の低価法による評価の選択
期末に販売商品などが残っている場合には、商品の棚卸しを行う必要があります。商品の棚卸しでは期末時点の商品の金額を計算しますが、一般的には原価(最終仕入原価法などで計算)で期末商品の価格を計算します。
青色申告の場合は、事前に税務署へ届出手続きを行う必要がありますが、低価法により期末商品の価格を計算することもできます。
低価法とは、原価と時価を比較し低い価格で期末商品の価格を計算するというものです。低価法で計算したほうが、売上原価が高くなり、利益を抑えることができます。
青色申告のデメリット
青色申告のデメリットは、白色申告よりも手間がかかるということです。
青色申告をするときに申請が必要であったり、普段の帳簿付けでは正規の簿記の原則に従って会計処理を行ったりするなど、白色申告に比べて条件があります。
書類の不備などがあれば許可が取り消される可能性もあります。
事前に青色申告承認申請書の提出が必要
青色申告を行うためには、所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなくてはならないことがデメリットです。
手続きを忘れると青色申告ができなくなるので、注意が必要です。
提出期限はその年の確定申告期限日(3月15日)までとなっており、新規開業の場合は、開業2か月以内に提出します。
青色申告特別控除は複式簿記での記帳が必要
青色申告特別控除で65万円、55万円の控除を受けるためには、複式簿記での記帳が必要なこともデメリットといえます。
複式簿記の作成にはある程度簿記の知識が必要となるため、負担に思う人が多いかもしれません。
まとめ
青色申告には、帳簿処理や手続きに多少のハードルがあるため、それを避けて白色申告を選んで事業をしている方も多いです。
しかし、せっかく事業をしているのであれば白色申告では受けられるメリットがあまりにも少ないため青色申告を選択するようにしましょう。
これからも続く経営の考えると必ず青色申告の方がメリットが大きいです。そこに何かハードルを感じているのであれば、全てサポートしますので翔彩サポートのコンサルティングサービスをご利用ください。
上記以外にもご不明な点等ございましたら、翔彩サポートまでお気軽にご相談ください。
監修者情報

経営コンサルタント 翔彩サポート 代表 広瀬祐樹
【経営分析×経営アドバイス×財務管理】による永続的に繁栄する経営体制を支援。
経営について悩んでいることがあれば、どんなことでも構いません。お気軽にご相談ください。