売上の発生主義と現金主義
皆さんこんにちは 長崎県佐世保市にある経営コンサルティング会社 翔彩サポートです。
今回は「売上基準」について解説します。
以前、売上基準の実現主義についてお話しました。
今回は売上基準の「発生主義」と「現金主義」についてお話します。
会計における3つの主義
企業会計原則は一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則の3部構成となっており、損益計算書原則は、企業が損益計算書を作成する際に適用すべきルールを示しています。
そして損益計算書原則には、損益計算書の本質として「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。
ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。(後略)」と記されています。
この「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。」という考え方を発生主義の原則と呼んでいます。
言い換えますと、発生主義の原則は「費用と収益は発生した期間に計上する」ことを要請しているわけです。
損益計算書原則
1 発生主義の原則
2 実現主義の原則
3 総額主義の原則
4 費用収益対応の原則
また、前回お話しした実現主義は発生主義の「未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。」という部分のことを言います。
発生主義とは?
発生主義は取引が確定した時点で会計仕訳を行うとする考え方です。
金銭の動きに関わらず計上を行う手法であり、複数月にわたる支出や定期的な支払いなどは発生主義に基づいて計上されることが一般的です。
発生主義のメリット
取引が確定した段階で会計処理を行うので、正確な収支状況をリアルタイムで確認しやすくなるとが発生主義を用いるメリットのひとつです。
仕入れを実施した時点で仕入高として計上できるので、対象の年度内における企業活動を正確に反映した会計資料を作成しやすくなります。
月々の支出状況を数値的に把握できるようになるので、将来的に入出金が生じる取引においても支払い時期を管理しやすくなることも発生主義に基づいて取引を行うメリットです。
また、個人事業主である場合は発生主義に基づいて複式簿記を用いることで青色申告特別控除を受けられるようになります。
青色申告特別控除では一定の要件を満たしている場合に最高65万円の控除を受けられるので、節税効果が得られることもメリットのひとつです。
発生主義のデメリット
発生主義を用いる場合は複式簿記による書類作成が必要になることから、会計処理が煩雑化しやすい問題があります。
会計処理にかかる工数が増加し、帳簿の抜け漏れや入力ミスが生じるリスクが高くなる点も発生主義を用いるデメリットのひとつです。
また、手元に売上金が入っていない状況でも利益として計上することから経営状況によっては資金繰りに影響を及ぼす場合があります。
資金不足を避ける対策としてはキャッシュフロー計算書の作成、会計システム導入による業務自動化等を行うことが一般的です。
現金主義とは?
現金主義は現金のやりとりが行われるまで費用を計上しません。つまり、計上のタイミングは「現金が動いた時」です。
なお、現在、現金主義だけで起票することが認められているのは、所得税の計算において、「青色申告」「小規模事業者」「事前届出」の3要件がそろっている場合のみです。
それに該当しない場合は原則発生主義会計となります。
現金主義のメリット
現金主義は、現金の受け取りや支払いがなされた時点で、会計処理をするルールであるので、取引の管理に対する手間が少なく、不正をしづらい点などがメリットとして挙げられます。
現金主義のデメリット
現金主義は現金が動いた時点での認識基準となるため、将来の費用の支払いや過去の収益の入金を現金主義で記録すると、企業会計原則で示される期間損益計算が成り立たなくなる恐れがあります。
たとえば、前払で商品を仕入れた場合や、逆に未払のまま商品を入手した場合は、現金主義だと商品を買った日とお金を払った日がずれてしまいます。その結果、正しい損益計算書ができなくなる場合があります。
また、商品を「掛け(支払前に商品を渡す)」で売った場合、商品を売った日と支払いを受けた日が違ってしまいます。
つまり、同じ日に発生したはずの収益と費用の間にタイムラグが生じてしまい、適正な期間損益計算ができなくなる可能性が高くなります。
まとめ
損益計算の基本は発生主義ですが、現金主義の立場で取引を捉えることも不可欠ですし、収益は実現主義で捉えることが原則となっています。
なかでも、現金主義は発生主義と密接な関係にあるので、その特徴や発生主義との違いについてよく認識しておく必要があります。
上記の内容以外にもご不明な点等ございましたら、翔彩サポートまでお気軽にご相談ください。
監修者情報

経営コンサルタント 翔彩サポート 代表 広瀬祐樹
【経営分析×経営アドバイス×財務管理】による永続的に繁栄する経営体制を支援。
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